株式会社日興電機製作所 代表取締役 和光良一(わこうりょういち)さん
「成果を上げる為の秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である」
とはドラッカーの言葉です。
また、集中の為には第一に廃棄が必要だとも言っています。
しかし、現実には、これはなかなか勇気の要ることです。
今、その仕事を止めてしまえば、始めに期待した成果は永久に失われますし、
これまでに費やした時間もお金も全てムダになります。
わざわざ「止める」という意思決定をしなければ、そういった損失が確定することもありません。
結果、多くの組織では、ずるずると昨日を引きずって仕事をしています。
私の会社もそうでした。父が急逝した跡をついで、私は7年前から社長をしています。
最初の3、4年は前社長の仕事を継続させるだけで手いっぱいでした。
それから徐々に、私にも自分が本当にするべき事が見えてきました。
それは、いわゆる第二創業だったのです。
ドラッカーは
「未来は今日と地続きで繋がっているが、決して過去の延長線上にはない」
と言っています。
過去を継続しているだけで、未来を創る事は出来ないのです。
それが分かった時、私は自分が真っ暗闇の中たった一人で佇んでいる事に気が付きました。
水村さんにお会いしたのは、そんな頃でした。正直、私は藁にもすがる思いで、コーチングをお願いしました。
しかし、暗闇が照らされることを期待したのではありません。
真っ暗闇の中で一歩前へ踏み出す勇気を、コーチングで得られれば
と思ったのです。
コーチングを受けて
水村さんは最初、私が明日に向けて取り組もうとしている事を、ゆっくりと聞いてくれました。
当時、私が抱えていたテーマは4つありました。
それぞれ案件ごとに方向性が全く異なり、しかも、それぞれが既存の事業の延長線上にあるものでした。
その為、私はこの他に何か新しい事を始めなければという問題意識も抱えていました。
一通り話しを聞き終わると、水村さんはおもむろにこう言いました。
「多すぎます。どれか一つ捨てて下さい。次回までに何を捨てるか決めておいて下さい」
どれもこれも止めるに止められないから続けてきた事なのです。
私は「他人事だと思って何て事を言うんだこの人は」と思いました。
一方で、強い衝撃と共に「その通りだ」とも思っていました。
どの案件も一つとしてまともな成果を上げられていなかったからです。
成果を上げる為には、集中。集中の為には廃棄とはドラッカーの教えそのものです。
このように、
水村さんのコーチングは、ドラッカーの教えと通じるところがあります。
何かを廃棄した方が良いとは、私も分かっていました。
でも、それを決断する勇気がなかったのです。迷いました。でも結局、決断を下す事が出来ました。
水村さんのコーチングの御蔭です。
一つ、大きな廃棄を決定すると後はドミノ倒しのように事は進みます。
組織を変え、自社で唯一売上が伸びている分野への開発に注力する体制を作りました。
そして、今年(2011年)8月に、念願の新製品を販売開始する事が出来ました。
それが、このナンバーディスプレイアダプター「アロハND3」です。
http://www.nikko-ew.co.jp/CTI/nd3.html
あのコーチングがなければ、この製品が世に出る事は無かったでしょう。
ですから、水村さんには、とても感謝しています。
水村和司からの紹介文
和光良一さんは、歴史のある電機通信メーカーの経営者です。
埼玉県に大きな工場を持っていて、その人となりや雰囲気は、
企業家というよりは、知性的で人格的な大学の先生という感じの方です。
探求心や人との調和力において卓越した力を持っています。
日本の繁栄を支えてきた「ものづくり」の会社にとっても、この社会不況は大きな課題です。
和光さんも、経営者として日夜会社の重要な舵取りをしています。
新製品の開発、販売チャネルの開拓、体系的廃棄といった難しい選択の連続が経営者の仕事です。
お客様や取引先、社員やその家族のことを考え、眠れない夜を何度も経験して
強くなると言われています。
和光さんと出会ったのは、父上の急逝により、急遽会社経営を相続された数年後です。
日々のオペレーションに慣れてきて、将来のビジョンをどのように描いていこうかと迷われている時期でした。
発展する経営は、自社の強みに集中する経営であると言われています。
しかし、先代から会社を引き継いだ経営者の場合、色々なしがらみや迷いが出て、
一点に自社の経営資源を集中することは意外に難しいのです。
私も、たくさんの経営者にお会いする中で、集中すること、
それ以外は捨てることの大切さと難しさをたくさん見てきました。
コーチングを通して
コーチングでお話を伺うと、和光さんは、ドラッカーを尊敬されていることを知りました。
ドラッカー流のコミュニケーションでは、
「相手の言葉を使い、相手に受け入れやすい要求をすることが肝要」
と教えておられます。
そんな和光さんにとっての集中とは、古いものの体系的な廃棄(捨てる)ということでした。
和光さんは、日々の経営をする中で、いつも
- 「ドラッカーならどう考える」、
- 「ドラッカーなら、今の自分に何と言うだろう?」と
思考し、判断されるドラッカリアンです。
このような方は、課題を明確にすることと、その課題をどのように解決していきましょうか?
という解決志向の質問をすることでアイデアや気づき、正確で強い意志決定を得ていかれます。
そして、そのようなプロセスで得た意志決定に向かって着実に遂行していかれます。
今は、色々なものを捨てて、自社の強みに集中して経営しておられます。
『仕事で、電話を使う全ての人の、余計な心配を減らす』
というミッションに向かって繁栄されますことを念願しております。